解説


一生に一度の、真剣勝負。


島に暮らす多美子は、夫の英明と、まだ「お母ちゃん」とは呼んでくれないが、前妻で、亡き親友・麻里の忘れ形見である娘・琴世と幸せに暮らしていた。かつて、親の決めた婚約者との結婚を破談させ、麻里と駆け落ち同然に島を出た英明は、
親からも勘当され、古くからの因習が残る島の人たちの厳しい目に合うことも覚悟の上で、再び島で生きる事を決意。
日々黙々と相撲の稽古に励むのだった。

そして、今日は20年に一度の遷官相撲大会の日。島に暮らす誰もが大切にしているその相撲大会で、
地元の皆から認められ、最高位の正三役大関に選ばれた英明は、地区の名誉と、家族への想いを賭けて、ついに土俵に上がる。

対戦相手は、島いちばんの実力者。喜びと不安を胸に多美子と琴世、そして英明、
それぞれの想いをのせ、生涯一度の大一番の幕が切って落とされる―。
名誉と誇りをかけ、勝負と地域への想いを一身に背負い土俵にあがる若者たちと、支える地域の人々。
それぞれの交差する熱い思いが、いまだかつてない大きな感動を呼び起こす。



いにしえから色濃く残る、日本の原風景と日本人の心。


今なお息づく日本の伝統・文化の息吹、そこに生きる人々を、映画を通じて伝えたい―
そんな想いを胸に、錦織良成監督が十年来注目していたのが【隠岐古典相撲】。

島根を舞台に「白い船」(02)、「うん、何?」(08)、「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」(10)を世に送りだし、
様々な人たちとの出会いを経て、ついに川上健一の同名小説(集英社文庫刊)と出会う。
隠岐諸島の豊かな大自然を背景に、日本人も知らない相撲の伝統や様式美、そして島に暮らす人々の強さと心の温かさを、
まさに?渾身?の想いで描き出した。亡くなった親友の夫と娘への愛に戸惑いつつも、共に生きようとする芯の強い女性・多美子には伊藤歩。古典相撲に挑む夫・英明に今作で映画主演デビューを飾る劇団EXILEの青柳翔。
フレッシュな顔合わせのふたりの脇を、錦織組にはおなじみの甲本雅裕、宮崎美子をはじめ、財前直見、笹野高史、長谷川初範、中村嘉葎雄などベテラン勢が、確かな演技で支えている。



相撲の原点【隠岐古典相撲】。一勝一敗の取組みの魅力。



隠岐諸島あげての全面協力のもと、出雲大社に次ぐ格式を誇る水若酢(みずわかす)神社の境内に、
三重土俵の準備から、練り歩きに土俵入り、クライマックスの大激戦まで、20年に一度の遷宮相撲を完全再現。
隠岐古典相撲の魅力を隅々まで堪能できるのは、今作ならではの醍醐味だ。

地元で実際に相撲に励む若き力士たち、熟練の行司や呼出したちも熱演。
4000人を超える観客はすべて地元の人たちというリアリティーの中、迫力ある相撲シーンの撮影に成功。
さらには隠岐諸島出身の現役力士、隠岐の海も特別出演し、映画に華を添えているのも見どころのひとつだ。
鍛え上げられた生身の肉体のぶつかり合いと、土俵上に飛び交う2トン余の塩を要しての熱狂的な応援合戦は、
大画面にふさわしいスペクタクル感に溢れている。