ストーリー


学生運動が活発だった60年代。
突然行方をくらませた劇団飛翔の新人女優・山村貞子に何があったのか……

日米安保条約反対に始まり、やがて世界的なベトナム反戦運動の波を受けて活発化した1960年代の学生運動。警察権力と運動家たちとの衝突が各所で大きな暴動騒ぎに発展する中、警察は運動家たちへ目を光らせていた。

とある警察署の取調室。水澤刑事は遠山と名乗る、舞台の音響オペレーターの男と対峙していた。危険物所持を理由に警察に拘留された遠山だったが、初対面のはずの刑事が驚くほど自分の周辺情報を熟知していることから、これが別件逮捕であるのは明らかだった。

ついに水澤刑事が核心に触れる。..
「山村貞子という劇団員は、本当はお前たちが"総括"したのだろう?」

これまでの捜査から水澤は、遠山が以前所属していた劇団"飛翔"がセクト(社会活動家の分派組織)の一つと考えており、遠山が劇団を辞める少し前に公演直前で突然失踪した新人女優・山村貞子の出来事を、セクトによる総括(リンチ)殺人だと疑っているのだった。..
今の劇団のことはよく知らないと言いながらも、遠山はぽつぽつと劇団の様子や稽古の目的などを語り始める。劇団主宰で演出家の重森、看板女優の栗原真理子、北嶋や有坂、浜岡といった仲間たち。
そして劇団の特殊な稽古。

世間からペテン師の汚名を着せられ、自殺した母のことで周囲から苛め抜かれた経験のある貞子。そして遠山は、幼い頃に父を亡くし、唯一の肉親であった母を他の男に奪われ、家族が崩壊した過去を持っていた。その他の劇団員たちも何かしらの心の傷を持ち、劇団で行われていた特殊な稽古は、そうした劇団員たちの心の傷を癒す目的もあった。

貞子と遠山との知られざる秘密と究極の愛

劇団では演出家の重森のほか、どこか儚げな貞子に心奪われる団員たちが少なからずいたが、一方で栗原真理子を筆頭に彼女を毛嫌いする向きもあった。遠山は何があっても貞子を守ろうと心に決めていた。二人は深く愛し合っており、切っても切れない特別な関係だったからだ。貞子が失踪した日の出来事も、遠山ははっきりと覚えている。彼女はあの日殺されてなどいない。いや、むしろ……。
次々と明らかになる貞子出生の秘密、貞子と遠山の関係。人を寄せ付けなかった貞子が、遠山に心を開いたのはなぜだったのか。

「呪い」と呼ぶか「生きようとする意志」と呼ぶかは観た者に委ねられる。特殊な力に翻弄された一人の女性の、悲しくもせつない物語が遂に舞台に明かされる!!